ブランド戦略の難しさ
成功モデルを勝ち取るために多くの企業はブランディング戦略をとって自社のブランドイメージ向上に努めてきた。
かっこいい、おしゃれ、イケてる、という感じに企業をアピールすることで、リクルートや商品の販売向上に企業のブランド価値を上げようとしてきたのだ。
ブランディング戦略は今に始まったことではなく、企業のブランディングとは少し違っているが、歴史を見てみれば軍服を有名な洋服企業に制作させ、一体感や統制能力を上げるために使ったという有名な話もある。
企業本来の能力や技術を謳うだけでなく、そこに属する人たちも含めて幸福感のある気持ちにすることで、パフォーマンス以上の効果を発揮するとも言われてきた。
今回は、スターバックスとドトールにおけるブランド戦略について考えて見たい。


誰もが知るスターバックス。おしゃれなお店にシーズンで変わるときめくような飲み物、それに抜群の対応のスタッフたち。
スターバックスで働きたい、という人も多く、ここにブランド戦略の成功が見える。
スターバックスでかっこよくコーヒーやキャラメルマキアートを作る姿は美しく、自分も「ああなりたい」と多くの人が思うのである。
店内は落ち着いた雰囲気で高級そうな家具もレイアウトされ、ゆったりした居心地のいい場所として感じることができる。
勉強をするにも、ちょっとした作業をするにも空いた時間を利用するというより、スターバックスで勉強をするという作業自体に、かっこよさを見出しているのである。
そのため、電源なども用意されている店舗も多く、「コンセント無断使用禁止」と張り紙をしているような店舗とは違い、どうぞ電源を使ってくださいと言わんばかりに座席には電源が用意され、ぼっち席向け、カップル、商談など場面に応じたレイアウトになっている。
ここでMacBookProなんぞ開こうものなら、超かっこいいステータス、できる男、のような錯覚にさえ落ち入れるのである。
しかし2017年、満足度第1位を独走してきたスターバックスであるが、ここにきてドトールに2年連続で負けてしまったのである。
参考資料:サービス産業生産性協議会2016年度「JCSI(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)」より
サラリーマンの愛用? ドトールって!
多くのスターバックスユーザーは、「ドトールなんて」って思うかもしれない。
タバコ臭く、おっちゃんたちの集まる場所。お金のないしがないサラリーマンが利用する珈琲店としての位置づけだろう。
確かに、全国ほとんどのお店が綺麗にレイアウトされているスターバックスに比べて、コンコース内にあるものや商店街にあるドトールはごちゃごちゃしている。
しかし、適度な落ち着き感のあるドトールは多い。スターバックスほどに高級感はなくとも、落ち着ける、居心地の良いお店は存在している。
深いスターバックスユーザーは、ドトールを使わないだろう。価値観が違う。
ドトールにあって、スターバックスに無いものを探してみよう。
ドトールには、サンドと呼ばれる鉄板ネタのミラノサンドがある。これは、シーズンや不定期で変わる手作りのもので、お店で注文ごとに作ってくれる。
同じようなもににサブウェイがあるが、あれほど高級なものでなく、もう少し手軽なものだ。
600円代で手作りのおいしいミラノサンドと美味しいコーヒーが楽しめる。牛丼屋に駆け込みたくても駆け込めない女子には、お腹も満たしてくれて、コーヒーを楽しみ、ちょっと会話のできるドトールはお財布にも優しいランチになってくれている。
それに引き換え、スターバックスでランチをするとお財布にもう少しダメージがあって、胃袋の満足感も少ないのかもしれない。

サブウェイはいろんなオーダーができるが、ドトールは常にA~Cの3種だ。それに新商品が時折加わってくる。


スターバックスに戻ってみよう。スタバには、手作りサンド系はない。温めることは出来ても、アツアツのトーストさえ出ないのである。
なぜ、スターバックスでは手作りサンドを置かないのか?
それは、全店舗統一したいはずのマニュアルが複雑になり、食材管理の工程まで増えるからだと筆者は睨んでいる。
素晴らしい接遇のスターバックスに、サンド系のマニュアルを増やすとなれば管理工程含めて恐ろしく増える。
それに、一番嫌うのは、商品の個体差だろう。
手作り系の大きな問題として、当たり外れがある。商品精度のバラツキである。先に示したようにドトールには当たり外れの店舗があり、それだけでも差がある。ここに、人が作るサンドにはもっとバラツキがあることが考えられる。
では、なぜこの「バラツキ」を人は満足度一位に感じることができたのだろうか?
・ドトールには、時間のない割と忙しい人達が利用する。
この「滞在時間」を各店がどのように考えるかは、とても大事になってくるがこの記事では、提供スピードと味に焦点をおきたい。
消費者は何を求めてコーヒーを飲みにいくのか?
ブランドだけで言えばそれはスターバックスなのかもしれない。鞄や洋服とも似ている。ヴィトンの鞄を持っていればそれだけでステータス。
スターバックスで過ごすというブランドを手に入れられることになる。
しかし、誰もがゆったり過ごしているわけではない。自分の勉強部屋のごとくデスクを長時間利用したり、オフィス代わりに居座り続け、忙しい時間の合間にコーヒーとお腹を満たしたいと思っているお客様からみれば、
せっかく来ているのにキャラメルマキアート一杯で半日過ごすお客を大事にするのか、とさえ思ってしまうだろう。
ここにブランド戦略の難しさが垣間見えてきて、経営者は悩まされていくのかもしれない。
自社にとって何がお客で、どれだけ収益を得たいのか、社会的な意味を持つのか、ということになってくるのかもしれない。
ブランド戦略が成功し、リクルーティングにまで影響して確かにスターバックスは、働くにしても憧れであり、若いスタッフが多い。
マニュアルもしっかりと作られて個体差を無くすようになっている。どの店舗にいってもほとんど差がない。
ある意味、ブランド戦略も作業工程もしっかりと作られて完璧に近いのかもしれない。なのに、Caféという尺度でみた場合に消費者は異なる答えを出した。
青竹のふしでも大事にしていることですが、ある程度の緩さをもったほうが人は馴染みやすい。
それに、脳は味を覚える。細かな分量まで感じてしまう。
ミラノサンドは手作り。ほとんど差がないように作っている。が、差は生まれる。その差は、ハンデではなくて実は「塩梅」の要素を持っている。
「ええ塩梅」という関西地方の言葉があるが、これは梅をつけるときの塩加減を言っている。
梅何個に対して塩何グラムというものではない。
つけすぎた年もあれば、塩気が多い、少ない年もある。
毎年同じ出来にはならないのである。
でも、人は、その変化を実のところ求めていて、いろんな感覚刺激からまたあの梅を食べたいと思うんだけども、人が作ったものだからこそ、
この「塩梅」が誕生する。
だから、ドトールにはタバコくさい店舗もあれば、コンコースの中にある立食のみの店舗も、駅前の商店街に佇む店舗もあって、どこか「ええ塩梅」なのである。
と、筆者はスターバックスが流行りだしたころからドトールを眺めてきて、ドトールの作業工程と気軽に入れるコーヒー店であること、スタッフにもいろんな年齢層の方が居られ
地域に根差し地域の憩いの場にもなりつつあるドトールを、すごいな、って思ってきていたのである。
ブランド力だけでなくて、その味や満足度、つまり中身に対して消費者が問う、従業者が問う時代は、もうやってきているのかもしれないですね。
2014年にドトールの作業工程を伝えていた。
2014年5月1日、9時15分に筆者がkintone内で社内向けにこの話をすでに書いていた。さすがkintone、ササッと「ドトール」で検索すれば書き残しにヒットした。
その記事を転用して、作業工程を見てみる。
ドトールコーヒーは、なぜ、あんなに早くミラノサンドを出せるのか?

けっこうおいしい、ドトールのミラノサンド。
他にも、モーニングやドリンクなどのメニューがありますよね。
あんなけ忙しいなか、良く手の込んだミラノサンドを出せるなあ?
あそこは、ガラス張りで作っているところも見えます。
だから、ドトールも同じように作ってるのかなと思っている人も多いはず。
もちろん、作っているのですが・・・


そこで、僕はよーく観察したわけです。
きっと、パンは同じ。でも具材が違う。
どこか共通項は?

これが共通だなと。
うまいこと手元が見えないような店舗設計になってて(単純に背が低いだけか?)、どうやってるのか見る機会がなかなかない。
そこでお金を払う際にのぞき込んでみた。
すると、そこには平たい大きめの透明パックが。中に具材が並んで居るではないか!
つまり、3セット分、作り置きをしていたというわけだ。
レタスがお皿の代わりになって、パンをカットしたら、レタスのお皿ごと乗っけるという仕組みだ。
なるほど、よく考えている。

これを プレパレーション という。
空いた時間に、あらかじめこういう作業をしておくことで、忙しくなってもこなせるということですね。
じつは、このプレパレーション。ビジネスがうまくいっている所ほど、うまく組み立てられています。
マクドナルド、デニーズ、セブンイレブン、などなど。(2017年マクドナルドは違う意味で勝負の年かも)
っていうことを、ドトールで学習出来るわけですよね。
だから、研修も大事だけど、勉強ってそこらじゅうに転がっているので、ヨドバシいっても、ディズニーいっても、
セブンイレブンいっても、何気なく過ごしていればそれまでですが、なんで、この商品はここに並んべられているんだろう?って考えるだけで、その意味を知ることが出来るわけですよね。
参考:2014年社内コメントより引用
本質を問われるブランド戦略
ってことで筆者の思い込み記事になってしまっていますが、流行り、かっこよさ、他人を幸せに見てしまう、などなど人の心が人生に与える影響は大きいのですが、
SNSやインターネットが普及し、自分がほんとうに何を求めて生きているのかわからなくなってはいませんでしょうか?
自分のしたいことは何なんだろう?
なぜ、この会社に所属しているんだろうとか。
ブランドは時に、ブランドをもつステータスが前に出すぎると、本来自分の思っていることや価値観をゆがめてしまいます。
本当に自分がそれをブランドだと思うのならそれでいいのでしょうが、企業や他社が行う「ブランディング戦略」に乗っかってしまっていると、物事の本質を見失うかもしれないですね。
ちょっと暖かい日には、スタバで冷たいものを。また、ドトールなんて、って思っている方も、勉強のために「アタリのドトール」でコーヒーを飲んでみてはいかがでしょうか?
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